小売業で働く人にとって「発注」は最も重要な業務と言えます。
なぜなら、在庫量が多ければ、無駄な作業が増え、逆に少なければ、機会ロスになって売上が落ちてしまいます。
スーパーマーケットで働いていると、「適正在庫にすることが大切だ」とよく聞きます。しかし、実際には多く発注しすぎたり、逆に少なすぎて棚が空いてしまったりすることがありますよね。
- 「発注が上手くなるコツを知りたい基本的な考えから実践できることがいいな…。」
- 「どのように考えて発注すればいいの?具体的な手順で説明してほしい。」
この記事では、発注が上手くなるコツを3つ紹介します。上記のような悩みを解決できる記事にしました。スーパーマーケットの加工食品売り場で2年間働いている私の経験談から紹介します。
スーパーやコンビニなど、お店の売り場担当者向けに書きました。明日からの発注業務に活かしてみてください。
発注を上手くやるには「予測の精度を高める」
発注が上手くなるためには「予測の精度を高める」必要があります。小売業は予測発注なので、「これぐらい売れるだろう」と考えて発注します。あくまで発注は予測なので実際の販売数(金額)を見てみないと正解はわかりません。
しかし、予測発注でも失敗しないために、発注の基本的な考え方、やり方はとても役に立ちます。まずは発注の基本を簡単に説明していきます。
発注の目的とは?
発注の目的は、「売場在庫を欠品させず、かつ多すぎない在庫量に保つこと」です。
上記の「欠品させず、かつ多すぎない在庫」を適正在庫と言います。つまり、発注の目的は「適正在庫を保つため」と言えます。
発注で使う数値情報
発注をするために必要な数値情報を紹介します。
私がスーパーマーケットで発注するときに実際に使っている数値情報です。
発注で使う数値情報
- 予算•昨年実績
- 単価
- 客数予測
- PI値
- 売上構成比
それぞれ簡単に紹介します。
①予算•昨年実績は、全体でどれぐらい売れるのかを教えてくれる指標です。社会情勢の変化がなければ、予算•昨年実績を基準に発注することで大きな失敗をしにくくなります。
②単価は、「全体で何個必要なのか」を考える参考になります。予算を単価で割ることで商品の個数の目安がわかります。
③客数予測は、普段との客数差を考慮して発注したり、客単価と見ることで大体の売上の目安をだしたりできます。
④PI値は、商品ごとに知っていれば客数予測と合わせてかなり正確な販売量を得ることができます。
⑤売上構成比は、部門の売上、またカテゴリーの売上を追っていく上で大切な指標です。もしあなたが「〇〇カテゴリーの発注をする」という場合は部門内の売上構成比を知っておくと参考になるかもしれません。
複数の数値情報を使うことで、より予測の精度を上げることができます。発注の失敗を減らすことにつながるので、複数の数値情報を考えてから発注してみてください。
発注が上手くいく3つのコツ
発注が上手な人は以下の2つの予測が具体的にできています。
- 売れる量
- 展開スペース
上記2つの予測精度を高めるために、発注が上手くなるコツを3つ紹介していきます。
発注のコツ①相対的に考える【売れる分だけ発注】
発注は原則、「売れる量だけ発注」します。そのためのコツとして、相対的に売れる量を考えましょう。
発注を相対的にする考え方は2手順です。
- 全体の売れる個数(金額)を予測する
- それぞれの商品を比較して、何個売れるか決める
具体例で見ていきます。あなたがA.B.C 3つの商品を発注する場合を考えていきます。
相対的な発注の例
予算が500,000円 客単価が約1,500円であれば、全体で約340個必要とわかります。※ 500,000 ÷ 1,500 ≒ 340
A> B > C の順でよく売れるから、
- A は 170 個
- Bは110個
- Cは70個
で発注しよう!
よくある失敗例も紹介します。
失敗しやすい発注方法
前回この値段で販売した時は…それぞれ、Aは200個、Bは160個、Cは100個売れているな。
じゃあ今回は、Aは220個、Bは180個、Cは120個発注しよう!
単品ごとに売れ数を追うと在庫を抱えすぎるリスクが高まります。今回は3種類の商品で例を出しましたが、商品の種類が10や20と増えていけば在庫リスクも高まります。
発注で重要なのは予算から逆算して、相対的に単品の数量(金額)を決めることです。
発注のコツ②展開場所•陳列量を考えて発注する
発注は、展開場所•陳列量を具体的に考えてからしましょう。コツはできるだけ具体的にイメージすることです。
例えば、エンドで展開するのか、定番に陳列するのか→ゴンドラ什器何個分か→棚は何段使うのか→フェイス数はどうするのか→1フェイスあたり何個入るのか
このように展開場所•陳列量が具体的であればあるほど、発注精度は高まります。
発注のコツ③トレードオフの考え方で発注しない商品を決める
発注では、取らない商品を決めることがとてもとても大切です。
上記の発注のコツ①②を考えて、予算に対して発注量が多すぎる、陳列場所がありそうにもない、という場合は発注を止めることが必要になります。
発注のトレードオフの考え方
- 売る商品、売れる商品を絞る
- 予算•昨年実績から売れる量を予測
- 展開場所•陳列量を考える
- 上記以外の商品は、発注量を抑える、または止める
トレードオフの考え方で発注するときには、特に④の考え方が大切です。
発注業務でよくある失敗
スーパーでは毎日発注業務があり、よく失敗もします。ここでは、よくある失敗例を紹介していきます。対策も合わせて書きますので参考にしてください。
発注のよくある失敗
- 数字を打ち間違えた
- 在庫の移動場所がない
- 予算に対して在庫が足りない
失敗①発注では、数字を打ち間違えることがよくあります。機械に数字を打ち込むので1桁多く発注してしまった。。など大量発注に繋がります。
発注は、小売業において最も重要な業務と言えます。対策としては、①時間をかける②ダブルチェックをすることである程度防げます。
予算が高い日の発注は、1度発注をしてから、時間を置いて発注し直すことも有効です。確認の意味もありますが、発注精度が上がり欠品も減らせます。
失敗②在庫の移動場所がない
スーパーマーケットの「発注」業務では、「元在庫の行き先がない」失敗をする人が多いです。季節やイベントなど、売場変更が多いお店では、新しく入ってきた商品を売場へ入れるために、もともと展開していた商品(元在庫)を下げないといけません。
元在庫の移動場所がないと、作業量が増えたり、BR在庫になったりしてしまいます。
なので、発注をするときは、あらかじめ「今ある在庫をどこに移動するか?」も合わせて考えましょう。
失敗③予算に対して在庫が足りない
予算に対して在庫が足りない。。という失敗の対策は、売ると決めた商品は多めに発注することです。
売れる量が読めないのであれば、1回目は多めにとりましょう。2回目以降は、1回目を基準に発注することで精度も高まります。
発注のコツ(まとめ)
小売業において、発注は基本的で最も重要な業務です。なぜなら、発注は、在庫管理、売上、陳列、品出しなど全ての業務の土台となる業務です。発注のコツをつかんで適正在庫に近づけていきましょう!
発注で使う数値情報
- 予算•昨年実績
- 単価
- 客数予測
- PI値
- 売上構成比
発注のコツ(まとめ)
- 相対的に考える
- 展開場所•陳列量を具体的にイメージ
- トレードオフで発注を止める